こんにちは、菅沼ケイです。
目標を立てることには、様々なメリットがあります。しかし、前回の投稿でもお伝えしたように、間違った目標設定を行なってしまうと、せっかく努力をしても良い結果につながりません。最終的に目標を達成できたとしても、時間がかかったり、ストレスを感じたり、モチベーションを失ってしまったりする可能性があります。そういった事態を避け、もっと効果的に能力やパフォーマンスを高めるためには、効果的な目標設定を行うことが重要です。そのために、今日はパフォーマンス・サイエンスの研究が進んでいるスポーツ界や音楽界でよく用いられてるSMART法という目標設定のアプローチを紹介し、応用例として英語学習者が効果的な目標を設定する方法をお伝えします。
SMART法とは
SMART法とは、目標設定を行う際に5つのポイント(Specific、Measurable、 Achievable、Relevant、Timed)を満たすように目標を立てるというアプローチです。SMARTという名前は、それらの5つのポイントに由来している頭字語(acronym)で、英語では「身なりがきちんとしている、おしゃれ」という意味の他に「賢い」という意味があります。今から5つのポイントを一つずつ解説します。
Specificは具体的であるという意味です。漠然とした目標を設定してしまうと、何から取り組めばいいのか分からず、努力の方向性を間違えてしまったり、段々モチベーションが下がったりしてしまう可能性が高いです。具体的な目標を立てれば、それを達成するために必要なリソースやステップが明確になるので、目標を達成しやすくなります。
(例)「英語を上達させたい」よりも「コンサルの仕事の幅を広げるために外国人のクライアントと通訳なしでコミュニケーションを取るための英語力を身につけたい」や「映画鑑賞を楽しむためにハリウッド映画を字幕なしで見れるぐらいのリスニング力をつけたい」の方が望ましいです。
Measurable は、達成の度合いを測定できるという意味です。人は成果を感じられる方がモチベーションを保てるので、目標の達成の度合いを判断するための基準があると良いということです。ただ、あまり数字にこだわるとストレスがかかってしまう場合もあるので、目標達成に必要な行動やルーティーンを決めて、それを行う度に記録し、自分がゴールに近づいているかを判断する基準として使うのもいいと思います。
(例)英語力を判断する基準として英語の試験が挙げられますが、何度も試験を受けないと途中経過が分からないという問題があるので、自分自身でも英語力をモニタリングするのがおすすめです。例えばスピーキングだったら自分の話す英語を定期的に録音して比較する、リスニングだったら字幕のついていない難しい英語のニュース動画などを選んで聞き、理解できる情報を書き出し、期間を空けて再度同じ課題に取り組むことで前よりもリスニングが上達しているかどうかを確認する、などの方法が挙げられます。
Achievable は、実現できるという意味です。自分の意思や行動で達成できる目標を立てないと、努力をしても自分の望んでいる結果が得られない場合があります。やってみないと分からないことはもちろんありますが、不可能に近い課題に取り組んで自分に期待しすぎることは精神衛生上あまりよくありません。(この投稿でも書きましたがモチベーションを高く保つための大事な要因として「適性を感じる」ことが挙げられます。)
(例)英語学習者だったら、子供の頃から英語に触れていない限り、発音を完璧にするのはなかなか難しい課題です。英語の初心者だったら、完璧な発音の英語を話そうとするのではなく、まずは理解してもらえる発音を目指す方が実現しやすいです。
Relevant は、適切である、もしくは関連性のあるという意味です。目標を達成するためにはお金や時間などのコストがかかるので、それらのコストを払ってまで達成するほどの価値があるかを予め確認しておかないと途中で挫折してしまう危険があります。(そうすると自分の自信を失います。)目標の時期が自分に合っているのかを見極めることも大事です。もし達成しようとしている目標が自分の人生の価値観や将来のビジョンと一致していない場合、自分にとってよりふさわしい目標を設定することで、もっと充実した毎日を送れるようになると思います。
(例)英語学習者だったら、英語を身につけることで得られるメリットが自分の人生の価値観や将来のビジョンとどう関連しているかを考えることが大切です。仕事の幅を広げたいのならビジネス英語を学ぶ、イギリス人の友達を作りたいのならイギリス英語を学ぶ、など自分の人生にとって価値のある英語力を理解して目標を設定すれば、その目標に向かって努力しやすくなり、目標達成から得られるリターンも大きくなります。
Timedは、期限つきという意味です。人には遠い先に得られる利益よりも目先の利益の方を優先する傾向があるので、よっぽどのモチベーションがない限り、「いつか」得られる利益のために「今」の時間や労力を費やすことを面倒くさく感じてしまいます。期限を決めることで、そこから逆算して目標達成するためにいつ何をすべきかが分かります。完璧主義でストレスを感じやすいという方は、最終的な目標達成の期限ではなく、「目標のために今月達成すべきこと」や「目標のために今週達成すべきこと」など小さな期限を設定するのもいいと思います。
(例)「いつか通訳なしでプレゼンをできるようになる」よりも「来年中に通訳なしでプレゼンを行う」という目標を立てた方が効果的です。ある程度プレッシャーに耐えられる方なら「1月12日のTOEIC試験で700点以上取る」など期限つきの目標とその期限を守るべき理由を作ってしまうのもいいと思います。
まとめ
目標を立てる際には、自分の性格、活動や分野、目標の目的など様々な要因によって、今日紹介したSMART法の5つのポイント以外にも考慮しなければいけない点があるかと思います。でも目標を立てる時の最初のステップとしてSMART法のようなフレームワークを参考にすることで、自分がこれから達成したいことがより明確になったり、それを実現するために必要な行動が見えたり、自分の今の目標の改善点が特定できたり、様々なヒントが得られるのではないかと思います。過去に目標達成に失敗して悔しい思いをした方、なかなか成果が出なくて目標達成に悩んでいる方、これから目標を立てようとしている方にとって、参考になれば嬉しいです。