英語を上達させると決意し、学習に励んでいたのに、調子を崩してしまった、忙しかった、など何らかの理由で学習の習慣が乱れてしまうことがあります。
そんな時に「学習をまた再開して目標に近づいていく人」と「目標を放置して学習をやめてしまう人」がいます。
後者になりそうな人が前者になるためには、人間の脳のメカニズムについて知ることが有効です。
例えば、人は基本的に自分の思考や行動に一貫性を求めます。そのため、自分の思考や行動が矛盾していると心理的な不快感が生じます。これを心理学では、認知的不協和(cognitive dissonance)と呼びます。
認知的不協和が生じた時、私達はその不快感を解消するために矛盾している思考や行動を変えるのですが、多くの場合、そういうプロセスが脳で行われていることを自覚していません。
すると、望ましくない方向に思考や行動を変えてしまうことがあります。
例えば、すごく太ってしまってダイエットを始めたとします。そんな時に友達に誘われてケーキを食べてしまったら、「やせたい」という思いと「太る原因となるケーキを食べた」という矛盾があるので、認知的不協和が生じる可能性があります。その結果、心理的な不快感を解消するために「私はそもそもそこまで太ってないし」と認知を変えてしまい、ダイエットをやめてしまうという事態です。
英語習得に関しては、学習の習慣が乱れた時、「英語を上達させたい」という思いと「英語学習をサボった」という行動が矛盾しているので、認知的不協和が生じる可能性が高いです。
そんな時に学習をサボったという望ましくない事態を正当化(rationalise、justify)しないためには、自分の中に生じている認知的不協和を認識することが重要です。
「最近、英語学習に取り組んでいないけど、そもそもここは日本だから英語が必要ないかも・・・」などと思い浮かんだ考えが認知的不協和による認知の変化だと客観的に気づくことができれば、その考えを信じこむ可能性が少し低くなります。
より確実に英語上達に対する決意を保ち、一時的な習慣の乱れを乗り越えて学習を再開するためには、
- 英語が上達することで得られるメリット
- 英語が上達しないことで生じるデメリット
を紙に書き出し、いつでも見えるところに貼っておくといいです。
そうすることで習慣が乱れてしまった時などに認知を変えて目標を放置してしまうという危機から未来の自分を救うことができます。
また、何らかの事情で普段より英語学習に費やせる時間が少ない場合は、完璧な学習を目指さずいつもよりもハードルを下げることも大切です。
表現力を鍛えることは英語の理解力を伸ばすことよりも時間がかかるので、忙しい時は表現力よりも理解力にフォーカスすることで、そこまで時間や労力をかけずに英語学習を継続することができます。
Harmon-Jones, E. & Harmon-Jones, C. (2007). Cognitive Dissonance Theory After 50 Years of Development. Zeitschrift Fur Sozialpsychologie – Z SOZPSYCHOL. 38. 7-16.