今日は英語上達の鍵を握る「メタ認知」という認知心理学の概念を紹介し、英語上達に活かす方法を紹介します。
はじめに
英語を習得するためには、英語の音のシステムに慣れ、単語の意味を覚え、文法を学び、実世界で英語がどのように使用されているのかという現場感覚を磨く必要があります。
でも人によって必要としている英語力のレベルや特徴は異なります。そして、現時点の英語力の強みや弱みも異なります。
したがって、英語を上達させるためには、自分にとっての優先順位を効果的につけ、最適なリソースを見つけることが重要になります。
例えば、発音が苦手な人は、まずは発音上達が自分にとっての最大の課題だということを認識し、発音を強化するための効果的な練習を見つけることで、英語を上達させることができます。発音が苦手なのに語彙力を増やすことばかりに気を取られていたら、いつまで経っても英語のコミュニケーションに自信がつきません。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、この当たり前をできていない人が沢山います。
その原因の一つとして、英語学習におけるメタ認知が低いことがあげられます。
メタ認知とは
メタ認知(metacognition)とは、自分の思考や感情を客観視してコントロールする能力のことを指します。英語ではthinking about thinkingと紹介されることが多く、metacognitionという用語は:
- 「認知活動」を意味するcognition
- 「何かを越えて」や「何かの上の」を意味するmeta
という言葉が組み合わさってできた言葉です。
メタ認知は日常の様々な場面において重要ですが、英語上達においても非常に大きな役割を担っています。
メタ認知が高い人は、自分の英語力に足りない要素を認識して学習の優先順位を効果的につけたり、成果をモニタリングして最適な学習法を見つけることができるので、努力を正しい方向に向け、実用的な英語力を身につけることができます。
逆にメタ認知が低い人は、自分の強みや弱みを正しく認識せずに闇雲に学習に取り組んでしまい、求めている英語力を手に入れるのに時間がかかったり、課題にぶつかった時にその解決法の探し方すら分からなくて学習をやめてしまったりします。
メタ認知を活用して英語を上達させる方法:
①計画する
同じ教材を使っても、課題の目的を意識しているのと意識していないのでは、頭の中に入ってくる情報や定着する内容が変わってきます。英語を勉強する時は、自分の長期的な目標を達成するための課題を計画し、「この課題を通して何を成しとげようとしているか?」を意識しながら学習に取り組むことが大切です。(効果的な目標設定についてはこちら)
②学習法を知る
英語学習には様々なテクニックがあります。例えば、単語を覚える時は、声に出す、書き出す、語源を調べる、絵を書く、記憶の宮殿を使う、自分と関連した例文を考える、イメージする、など。英語の課題に取り組む時は、自分が活用できる様々なテクニックを学び、学習法の選択肢を知った上で、自分にとって最適だと思うものを試すことが重要です。
③モニタリングする
英語を上達させるためには、自分の能力や感情をモニタリングすることがとても大事です。「何が上手くいっているか?」「何が上手くいっていないか?」「モチベーションを維持できているか?」などと自分に問いかけ、その原因を「何で?」と答えが見つかるまで自問自答することで、継続するべきことと変えるべきことが明確になります。
環境の変化や時間の経過と共に自分に合う学習法が変わることは自然なことなので、自分の英語習得の過程を客観視し、必要に応じて取り組む課題や学習法をアップデートしていくことが大切です。
最後に
どんなに素晴らしい先生にレッスンを受けても先生は付きっ切りで英語を指導するわけではないので、レッスン外の時間をどのように効果的に使うかによって、英語学習の成果が変わってきます。そこで必要になるのがメタ認知です。
メタ認知を高めて自分の学習の主導権を握れば、英語を効果的に上達させることができる上、日常生活にも応用できる問題解決能力が身につきます。
参考文献:
Anderson, Neil. (2002). The Role of Metacognition in Second Language Teaching and Learning. ERIC Digest.